帽子専門店ハンドメイド

風にのってきたメアリー・ポピンズ

すると、じぶんもまた、変わっていることがわかりました。いちめんに水色の模様をちらした、きれいなレイヨンのマントを肩にはおっていましたし、首すじのへんがさっきからくすぐったかったのは、鏡でみると、帽子のつばからはみだして、まだたれさがっている、長い巻いた羽根のせいなのです。はいていたよそゆきのくつは消えてしまって、そのかわりに、もっと上等で、バックルにキラキラした大きなダイヤモンドのついているくつになっていました。変わらないのは、白い手袋と、そして、オウムの柄のこうもりがさだけでした。
「まあ、すてき!」と、いいました。「ほんとの外出日だわ!」


銀色のボタンのついた青い上着をきていて、それによくあう青い色の帽子をかぶっていました。

角のタバコ屋の店さきで帽子をなおしました。その店は、一つでなくて三つ影のうつる、ふしぎな窓ガラスのある家でした。だから、いつまでもそれを見ていると、じぶんの姿が、じぷんではなくて、だれか、よその人が一かたまりになっているように思えてくるのでした。しかし、じぶんの姿が三つうつっているのを見ると、うれしさのあまり、ため息をつきました。そのひとりひとりが、銀のボタンのついた青い上着をきて、それにあう青い帽子をかぶっているのですから。そのながめがとてもすてきに見えたので、三つどころか、一ダースでも、あるいは三十でもうつっていたらいいのにと思いました。多ければ多いほどいい、というわけです。
「さあ、いきましょう。」と、まるで、子どもたちにまたされてでもいたように、きつい声でいいました。


住んでいたのは、そのあたりで一ばんいい野原でした――それは、たいへんひろくて、いちめんに、おさらくらいの大きさのキンポウゲと、ホウキ草よりもっと大きいタンポポが咲きそろっていました。どこもかしこも、キンポウゲのうすみどりと金色で、そのなかに、タンポポが兵隊さんのように立っていました。赤牛が、その兵隊さんの頭を一つたべると、かならずそこからまた、べつのが生えてきました。緑色の軍服で、黄色の毛皮帽の兵隊さんが。


「きっと中国だと思うわ。」と、ジェインがマイケルに、小声でいいました。「そうよ、たしかにそうよ!」と、またいいましたが、ちょうどそのとき、一軒の家の入り口があいて、ひとりの老人が出てくるのが見えたのです。その人は、かわった服装をしていました。ぴんとした金らんの着物で、足首まである絹のズボンは、すそのひだを、金の輪でとめてありました。くつのさきは、とてもしゃれたかたちで上をむいていて、頭からは、長く編んだ灰色の髪の毛が、ほとんどひざくらいまでさがっていて、たいへん長い口ひげが、腰のへんまでもたれさがっていました。
その年とったりっぱな人は、彼女と子どもたちのいるほうを見て、たいへんていねいなおじぎをして、頭を地面につけました。ジェインとマイケルがおどろいたことには、おなじようにおじぎをして、帽子についていたヒナギクが、地面にさわりました。


ふたりのまんなかを歩いていました。新しい帽子をかぶって、たいへんきわだってみえました。そして、ときどき、たちどまっては店のショウ・ウィンドウをのぞきこみましたが、それは、帽子がちゃんと頭にのっているかどうか、帽子についているピンク色のバラの花が、なにかキクみたいなありふれた花にかわっていやしないか、ということを確かめるためなのです。

「指さすものじゃありません。」といって、じゅうたん屋の店さきにうつったピンク色のバラを、さいごにちらっとながめました。


服をきて、帽子をかぶって、すっかり出かけるしたくをしていました。


「さきに、ショウ・ウィンドウを見てもいい?」と、マイケルは、うれしさのあまり、片足でピョンピョンはねながらいいました。
「いいでしょう」と、おどろくほどおだやかにこたえました。もっとも、ジェインとマイケルは、ほんとに、ひどくおどろいたというわけではないのです。というのは、なにがすきといって、店のウィンドウを見ることくらいすきなことはないということを、ジェインもマイケルも、よく知っていたからです。そしてまた、ふたりは、じぶんたちが、おもちゃや、本や、ヒイラギの枝や、干しブドウ入りのお菓子を見ているあいだ、ウィンドウにうつったじぶんの姿しか見ていない、ということも知っていました。

「ちょっと、おまえの姿をごらん!」と、ひとりごとをいいました。とくべつに気をひかれるのは、うえに毛皮のついた新しい手袋で、いかにも、このましく見えるのでした。それは、今までにもったことのない、はじめてのもので、手にはめて、店のウィンドウにうつっているのを見ていたら、永久に見あきないだろうと思われました。そしてうつっている手袋をよくよく見てから、こんどは、こまかく目をくばって、全体の姿を見てゆきました――コート、帽子、スカーフ、くつ、そのなかに自分自身がいるのです――そのあげく、思ったことは、ようするに、それほどスマートできわだった人は、今までに見たこともない、ということでした。
しかし、冬の日はみじかいということはわかっていましたし、それに、お茶の時間までには家へ帰らなければならなかったので、ため息をついて、ガラスにうつった輝くばかりのじぶんの姿に、いやいや別れをつげました。

「だけど、マイアのおくりものがないわ。あの子は、みんなになにか買ったけど、じぶんのはなんにも買わなかったわ。マイアは、クリスマス・プレゼントがもらえない。」
そういうと、ジェインは、マイアにあげられるものをみつけようと思って、もっていたつつみを、あちこち、さがしはじめました。
そばのウィンドウに、ちらっと目をやりました。そこには、かがやきかえしてくるじぶんの姿がありました。いかにも、あかぬけのした、ほれぼれするような姿でした。帽子をまっすぐにかぶって、服はきちんとプレスがきいていて、そして、新しい手袋が、まさに、その見ばえのする姿を、このうえなくひきたてていました。
「しずかになさい。」ジェインにむかって、けわしい声でいいました。そうして、新しい手袋をさっとぬぐと、一つずつ、マイアの両手にすばやくはめてやりました。
「さあ!」と、つっけんどんにいいました。「きょうは寒いから、それでいいでしょう。」
マイアは、手にはめられた、ほとんどからっぽのぶかぶかの手袋を、じっと見ました。そして、なにもいわずに、そばへよると、あいたほうの手をのばして、首にまくと、ほおにキスをしました。ふたりは、しばらく目を見あわせていました。そして、よくわかった人どうしがするように、にこりと笑いました。

「だけど、手袋のこと、どう思って?」と、ジェインがいいました。
「マイアにあげるのを見てたのよ。いまは、してないでしょ。だからほんとよ。」
「あら!」と、バンクス夫人が、さけびました。「あなたの、あの、毛皮のついた、一ばん上等の手袋でしょ! あれを、あげちゃったの!」
フンと、息をすいました。
「わたくしの手袋は、わたくしの手袋です。わたくしの、すきなようにいたします!」と、人もなげにいいはなちました。
そして、帽子をなおすと、お茶をのみに、台所へおりてゆきました。……

風にのってきたメアリー・ポピンズ

気位が高く、魔法に見えるほど有能で、ツンとした女性がショー・ウィンドウの自分の姿にうっとりと見とれているってなんて可愛らしい。

帰ってきたメアリー・ポピンズ 大人の帽子→
←大切な帽子 ハイジ

帽子専門店レディース


inserted by FC2 system