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若草物語

ロデリーゴは羽つきの帽子、赤い上着、栗色の髪をたらすという美しい装いでギターを持ち、例の靴を履いて出てきた。


ジョーは帽子がぱっと飛びそうになって、頭から離れようとするのをあわてて押さえながら答えた。


「人に見てもらおうと思って、ありったけの帽子やよそゆきの服やリボンを全部いっぺんに体につけたらへんてこなのと、同じわけよ」


ローリーは毛皮のふちのついた上着と帽子をつけて、まるで若いロシア人みたいな格好をしていた。


「あの、べス、帽子の羽飾りをちょっと巻き上げてね」


「ジョー博士には、手紙がふたつ、本とへんてこりんな古帽子。この帽子大きいもんで、郵便局の外へはみだしていたわ」
ベスは、ジョーが書きものをしている書斎へ入って行って、笑いながら言った。
「まあ、ローリーったら、人が悪いわね! あたし、毎日暑くて顔がぴりぴりするから、もっとふちの大きな帽子が流行すればいいのに、といったのよ。そしたらローリーは、『流行なんかどうだっていいじゃないか。大きな帽子をかぶって気持ちよくしたほうがいいよ!』だって。だから、あればかぶるわ、といったのよ。そしたら、あたしを試そうと思ってよこしたのよ。いいわ、おもしろいから、これをかぶってやろうっと。流行なんかちっとも気にかけないところを、見せてやるわ」
ジョーはそう言って、その古めかしい、ふちの広い帽子を、プラトンの胸像に引っかけると、ふたつの手紙を読んだ。

「どう、ジョー、これでいい?」
「まったく素敵。申し分なし。服を少し上げて、帽子をまっすぐにしなさい。そんなにかしげるとセンチに見えるし、風が吹くといっぺんに飛んでしまうわ。さあ、行きましょう!」
「あら、ジョー、あんた、そんなへんちくりんな帽子をかぶっていくの、あんまりおかしわ! 変なかっこうしてみんなに笑われるの、いやだわ」
「ローリーがおもしろ半分に送ってきた、広ぶちの古めかしい麦藁帽子を、赤いリボンで結びつけているジョーを見て、メッグは苦情を言いたてた。
「いいえ、あたし、かぶって行くわ。これとてもいいもの――日よけになるし、軽くて大きいし。それに、ご愛嬌になるでしょう。あたし、自分が気持ちよければ、変な格好になったってかまわないの」
そういうなり、ジョーはどんどん先にたって出かけたので、他の者もあとに続いた。――四人の姉妹の華やかな一団――それぞれ好みの夏服を着て、しゃれた帽子の下に、うれしそうな顔を輝かせ、この上なく美しく見えた。

ジョーのおかしな帽子は、たしかに一同の感謝を受けるにあたいした。まず第一に、みんなを大笑いさせて、ぎこちない空気をいっぺんに吹き飛ばしてしまった。第二には、オールを漕ぐごとに、ぱたぱたとあおられて涼しい風を送った。それに、もしにわか雨がやってきたら、みんなのいい雨傘がわりになる、とジョーはいうのだった。

ジョーはそう答えて、大きな帽子のかげから、フレッドをにらみつけながら、唇をきっと噛んだ。


「あの人たち、いったいこれから何をしようというんだろう?」とローリーは、もっとよく見ようと眠い目を開いた。お隣の娘たちの様子には少し変わったところがあったからだ。各々ふちのぱたぱたする大きな帽子をかぶり、片方の肩に茶色のリンネルの袋をかけ、長い杖を持っていた。メッグはクッション、ジョーは本、ベスはバスケット、エイミーは紙ばさみを携えていた。みんな庭の中をそっと通り抜けて小さな裏門をくぐり、ローレンスの家の間にある丘を登りはじめた。
「へえ、ひどいなあ! ピクニックに行くのにぼくを呼ばないなんて。ボートに乗ろうたって鍵を持っていないからだめじゃないか。たぶん忘れたんだろう。持って行ってやろう。そしてどんなことをするのか見てやろう」
帽子は五つか六つ持っているのにそのひとつがなかなか見つからない。


ジョーはできるだけ音のしないように帽子をかぶり、ジャケットを着た。

こんな動作を二、三度繰り返しているのを、ちょうど向こう側のある建物の窓にもたれていた黒い目の若い紳士がおもしろそうに見ていた。三度目にまた戻って来たジョーは、ぶるっと身を震わせると、帽子をまぶかにひきおろし、階段をのぼっていった。それはまるでこれから歯をすっかり抜いてもらいに行く人のような様子だった。
実際、入り口を飾っている色々な看板の中に、歯医者のもかかっていた。大きな作り物のあごが上下にゆっくりと開いたり閉じたりして、きれいな歯並に人の注意を引くしかけの看板をしばらく見ていたさっきの若い紳士は、コートを着て帽子を持っておりて行き、真向かいの入り口に待ちかまえるように立った。紳士は微笑みをうかべながら体を震わしてひとりごとを言った。――
「ひとりでこういうところへ来るなんて、あの人らしいな。でももしひどい目にあったら誰か付き添って家まで送る人がいた方がいい」


「この丘を僕とかけっこしよう。気が晴れるぜ」とローリーが言い出した。
あたりには誰もいなかった。平らな道が誘い込むように下り坂になってジョーの前にのびている。その誘いにもう我慢できなくなってジョーは一散に駆け出した。たちまち帽子が吹き飛び櫛がふり落されヘアピンもばらばら飛んだ。ローリーは先へゴールへ着き自分の言い出した機嫌直しのやり方がうまくいったのをうれしがっていた。髪をなびかせ目を輝かし頬を紅にそめて、息せき切って追って来るアトランタ姫にはもう不機嫌な影は少しもなかったからである。
「あたし馬だったらよかったわ。そしたらこんな素晴らしい空気の中で何キロ駈けたって息も切らさないでしょう。ああ、いい気持ちだった。でもほらこんなひどい格好になっちゃった。あんた行ってあたしの落としたものを拾ってきてちょうだい。いい子だから」
ジョーはそう言って、真っ赤な葉が土手一面散り敷いている紅葉の木の下にぐったりと身を投げた。
ローリーはゆっくりと、ジョーの落としたものを拾いに行った。その間ジョーは身づくろいをちゃんとするまで誰もそばを通らないようにと思いながら、乱れた髪を束ねていた。ところがそこへ誰かが来た。そかもそれは誰あろう。人もあろうにメッグだった。よそ行きの装いに一際淑女らしい姿で、今人を訪ねての帰りだったのである。
「まあ、こんなところで何しているの?」とメッグは髪をふり乱した妹を、品の良い驚きの目で見ながら言った。
「紅葉の葉を拾っているの」とジョーは今かき集めたばかりのひとにぎりの紅葉の葉をより分けながら答えた。
「それから、ヘアピンも」とローリーが口を出して、ジョーの膝へ五、六本のヘアピンを投げた。「これは道に生えているんですよ、メッグ。それに櫛や茶色の麦藁帽子もね」
「あんた、駈けたんでしょう、ジョー。よくまあそんなこと!いつになったらそんなおてんばやめるの?」とメッグは小言をいいながら、ジョーのそでのカフスを止め、風に思う存分あおられた髪をなでてやった。
「年とって体がきかないでね、松葉杖にすがるようになるまでは決してやめないわ。あたしのことまだそんな年でもないのに大人あつかいするの、よしてちょうだい、メッグ。お姉さまが急に変わったのでもつらいのよ。あたしだけはせめてできるだけ子供にしておいて」


けれども、ジョーはまだ帰ってこなかった。みんなは心配になってきた。そこで、ローリーが探しに出かけた。ジョーはふらふらと怒った気まぐれで、何をやるかわからないからだった。しかし、ローリーはジョーに行きあわなかった。ところが、そのうちにジョーは、顔に、とても妙な表情を浮かべながら入ってきた。――おどけとおそれ、満足と後悔、そういったものが一緒になったような顔つきなので、家の人々は、何がなんだかわからないのだが、ジョーが少し声をつまらせて。
「これは、お父様を気持ち良くしてあげ、お家につれて来てくださるようにというあたしのこころざしよ」といって、丸く巻いた札束を母の前に出した時はますますあっけにとられるばかりだった。
「まあ、あんた、こんなお金、どこで手に入れたの? 二十五ドルも! ジョー、まさかあんた、とんでもないことをしたんじゃないでしょうね?」
「違うわよ。ほんとにあたしのお金よ。人に貰ったのでもなければ、借りたのでもないし、まして盗んだのでもないわ。あたしが自分で稼いだお金よ! いいでしょう。あたしが、あたしのものを売ったんだから」
そういって、ジョーは帽子をとった。とたんに、皆はあっと叫んだ。あのふさふさとした髪の毛が全部、短く刈ってあるではないか。
「あら、あの髪を! あの美しい髪を!」


「あら、べスじゃないの!」とジョーは晴れ晴れした顔で帽子をふった。

「マーチおば様がぶつぶついわないように。あなたの髪よく似合うわ。男の子みたいで素敵よ」と、メッグは、背の高い妹の肩の上に、おかしいほど小さく見える巻き毛の頭を見て、笑いを抑えながら言った。
「そういってもらうと、ありがたいわ」とジョーはローリー式に帽子にちょっと触って歩き出した。まるで、冬の寒い日に毛を刈られたひつじみたいだ、と心の中で思いながら。

若草物語

塗る日焼け止めがまだなかった頃、帽子と木陰を選んで歩くことが日よけの鍵でした。今だってもちろん高い効果がありますし、何といってもしとやかに見えます。
ふわっと飛びそうな帽子を押さえる仕草が、女の子の魅力のひとつとして人目をひいていたんじゃないかと思います。ふわふわ飛んで行ってしまいそうで目が離せない女の子そのもの。

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