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ハイジ

「つれていけ! この子をつれてって、だめにしちまえ! そいで、二度とこの子をつれて、わしの目の前にあらわれるな。この子が、きょうのおまえみたいに、羽をさした帽子なんかかぶってしゃべりまくるのなんぞ、見たくもないわ!」

「さあ、おいで。そこにあるおまえの帽子をとって。それ、よくはないけど、まあいまはそれでいいからかぶって、早くでかけよう。」
「わたし、行かない。」


夕方になって、ロッテンマイアーさんは、ふと、ハイジが出ていこうとしたときの服装のことを思いだしました。そして、ゼーゼマンさまが帰ってこられる前に、あの子の着るものをクララのお古でととのえてやろうと思いつきました。クララに相談してみると、服もショールも帽子も、いくらでもよろこんであげたいということでした。そこでロッテンマイアーさんは洋服ダンスを一度きちんとしらべて、もっているもののなかで、なにをのこして、なにがたりないか見てみようと、部屋へ行きました。
ところが、何分もしないうちに、ぎょっとしたようすでもどってきました。
「あんなものを見せられるなんて、アーデルハイト!」ロッテンマイアーさんは吐きだすようにいいました。「とんでもないことだわ! あなたの洋服だんすに、服をしまうためのたんすに、アーデルハイト、その床に、わたくしがなにを見つけたと思うんです? パンの山! 小さなパンの山じゃありませんか! クララ、洋服だんすにですよ! それも、山ほどためこんで!」
「ティネッテ!」ロッテンマイアーさんは食堂にむかって大声でいいました。「アーデルハイトの洋服だんすから、古いパンをほうりだしてちょうだい! それからテーブルの上にあるひしゃげたむぎわら帽も!」
「だめよ! だめよ!」声をあげました。「あの帽子、捨てちゃだめ! パンは、おばあちゃんにあげるの。」

ゼバスチャンはそばにくるたびに、なにかへんなしぐさをして見せました。自分の頭をちょいと指さし、頭をちょいと指さすのです。それからうなずいて、ウインクしました。(だいじょうぶですよ!わたしがちゃんとしておきますからね!)と、いっているみたいでした。
夜、自分の部屋にもどってベッドにはいろうとすると、かけぶとんの下に、あのひしゃげたむぎわらの帽子がつっこんでありました。その古ぼけた帽子をひっぱりだすと、うれしさのあまり、思わずもっとへこませてから、ハンカチにくるんでたんすのいちばん奥へいれました。ゼバスチャンがそっとふとんのなかへ入れておいてくれたのでした。ティネッテが呼ばれたときゼバスチャンも食堂にいて、悲しがるのを開いたのです。そこで、ティネッテのあとについていって、ティネッテが部屋からパンの山の上に帽子をのせて出てきたところをつかまえて、さっと帽子をかすめとり、「これは、ぼくが捨てるよ。」といったのでした。
ゼバスチャンはよろこばせたくて、こうして帽子をすくいだし、晩ごはんのとき、身ぶり手ぶりで知らせて元気づけようとしていたのでした。


それから洋服ダンスをあけて、あるものをさがしました。それも、きっとまだいれてないにちがいありません。思ったとおりでした。あの古い、赤いショールがおきっぱなしになっていました。ロッテンマイアーさんの目には、もってかえるにはあまりにもひどい、ぼろに見え たのでした。そのショールで別のあるものをつつみ、かごのいちばん上におきました。それで、赤いつつみはとても目立ちました。それからりっぱな帽子をかぶると、部屋をあとにしました。
ゼーゼマンさんが馬車のところまで送っていこうと立って待っていたので、子どもたちはあわただしくさよならをしなければなりませんでした。ロッテンマイアーさんは階段の上に立っていました。そこで別れをつげるつもりだったのです。ところが、へんな赤いつつみが目にはいりました。ロッテンマイアーさんは、さっとかごからひきぬいて、床にほうりだしました。
「いけません、アーデルハイト。」おそろしい声でいいました。「こんなものをもってこのお屋敷から出ていくことはなりません。だいたい、こんなもの、もって帰らなくてもいいでしょ。じゃあ、さよなら。」
そんなにはっきり止められては、もうひろいあげるわけにはいきません。でも、あきらめきれずに、ゼーゼマンさんを見あげました。その目が、ハイジにとってはなによりの宝物をうばわれたことをうったえていました。
「それはいけない。」ゼーゼマンさんはきっぱりといいました。「この子がもっていたいものは、もって帰ればいい。子ねこであれ、かめであれ、いいじゃないか。そんなことをいちいちあらだてるのはよしましょう、ロッテンマイアーさん。」
いそいで床からつつみをひろいあげました。目が、お礼の気持ちとうれしさで、ぱっとかがやきました。


「ほんとだ、ハイジだ。まあ、なんということだろう!」
立って、ブリギッテに握手しました。ブリギッテはようすに目をまるくし、息をのんでまわりをぐるぐるまわりながら、いいました。
「ばあちゃん、ばあちゃんに見えたらねえ。なんとまあきれいな服を着ていることか、このようす、見ちがえるほどだよ。そいでこの机の上にのっている羽のついた帽子、これ、あんたのかい? いっペん、かぶってみてよ。あんた、どう見えるか、わたしに見せてよ。」
「ううん、それ、かぶりたくないの。」いいました。「おばさんにあげる。わたしはいらないから。わたしのを、まだもってるの。」
そういって、赤いつつみをひらいて古い帽子をとりだしました。はじめからしわになっていた帽子は、旅のあいだにもっとしわくちゃになっていましたが、気にもしませんでした。ここをつれさられて出ていったとき、おじいさんが、羽をつけた帽子など二度と見たくないといったことばを忘れてはいなかったのです。だから自分の帽子をとりわけたいせつにもっていたのでした。

ハイジ

有名な白パンのかげで、帽子も重要な小道具になっています。

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